たった数分で3DCGを作成!最新macOSの「Object Capture」とは?

NEWS

2021.06.09

ブログ

こんにちは。エム・ソフトの有村です。

日本時間の6月8日に開幕した世界開発者会議(WWDC21)基調講演において、Appleが各製品の次期バージョンとなるiOS15、iPadOS15、macOS Montereyなどを発表しました。

このうち、macOS Montereyに搭載された「Object Capture」という機能が、AR、XRのビジネス活用の観点でとても重要な機能だった為、ご紹介していきたいと思います。

macOSの新機能「Object Capture」

今回の新OS発表で最も注目したのは、macOS Montereyに追加された新機能の「Object Capture」です。
デベロッパー向けの3DキャプチャーAPIなのですが、この機能を使うと、iPhoneやiPad等でオブジェクトを撮影するだけで3Dモデルデータが簡単に作れてしまいます。

これまでは、3DCGモデルデータを作る為には高い技術が必要で、かつ結構なコストがかかってしまっていたのですが、Object Captureを使うと手間も少なく誰でも3Dモデルの作成が可能になります。

作成方法はとても簡単で、対象物の周りを1周ぐるっと撮影するだけです。
これらの画像データを「フォトグラメトリ」という技術を使って3Dモデル化します。

フォトグラメトリとは?

フォトグラメトリとは、対象物を様々な方向から撮影して、それらの画像をコンピューターが解析し、最終的に3DCGモデルデータに変換する技術です。

例えば最近の映画やゲームなどは3DCGを使用しているものが多いですが、この技術からデータを作成するケースも増えてきています。
また、小さな対象物だけでなく、地形調査や測量など、広くて大きい範囲でもフォトグラメトリの技術が使われています。

従来、3DCGモデルデータを作る際は3Dスキャナのような特殊な機器が必要でしたが、最近ではコンピュータやカメラの性能向上によって、画像から3DCGモデルデータを作ることも可能になってきています。
ただし、フォトグラメトリで3DCGを作るには多数の画像が必要で、これらを画像解析するには高性能のマシンが必要であり、また、解析には多大な時間がかかることもありました。

Object Captureのすごいところ

それでは、Object Captureのいったい何がすごいのか、1つ1つご紹介していきます。

数分で3DCGモデルデータが作成できる

前述のとおり、これまで3DCGモデルデータを作る為には専門的な技術が必要で、時間も手間もかかってしまっていましたが、Object Captureを使えば数分程度で3DCGモデルデータを作成できます。

特殊な機材も不要で、MacとiPhoneまたはiPadがあれば利用可能なので、ここまで手軽に3DCGモデルデータを作成できるのは非常に革新的なことだと思います。

ARやXRで使用できる

作成したデータはAR、XRアプリで使用可能です。
たとえば、作成した3DCGモデルデータをARで表示、といったことも簡単にできるようになります。

これらの活用例は後ほどご紹介しますので、ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

リアルサイズの3Dデータが作れる?

こちらはAppleの発表では明言されていなかった為、予想ではありますが、iPhone/iPadを使って撮影する場合、スケール情報(大きさなどのサイズ情報)を取得することが可能なので、スケール情報付きの3DCGモデルデータを作成できるのではないか、と思われます。

これによって、実際の対象物の大きさに限りになく近い3DCGモデルデータを作成できる為、ARアプリで機材や家具などのリアルサイズの設置シミュレーションなどを簡単に行うことができるようになります。

従来のフォトグラメトリでは、後からスケール情報を設定する必要がありましたが、この手間がなくなるのは、非常に便利です。
特に、LiDARスキャナを搭載した端末であれば、さらに精度の高いスケール情報を取得できるのではないか、と思われます。

最近のAppleは、積極的に3D関連の機能強化してきているので、この辺はAppleの戦略の一環なのかもしれません。

LiDARスキャナについての詳しい説明はこちらをご覧ください。

活用例・利用シーン

ここまでObject Captureの機能について解説しましたが、ここからは実際にどのようなシーンで活用できるのか、いくつかご紹介したいと思います。

①建設現場の状況を3D化!施工業務の効率化に

たとえば、建造物や建設現場の状況を3DCGモデルデータとして記録する、といった活用が考えられると思います。

建設現場では、「現場の形状や構造を立体的に記録したり測ったりするのが大変」などの課題が多くありますが、Object Captureを利用することで、業務の効率化が期待できるのではないかと思います。

こちらの動画はiPad Proで点群を取得している様子を撮影したものですが、このようなイメージで簡単に現場の情報を取得できるかと思います。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進に、3DCGモデルデータを活用を検討してみてはいかがでしょうか。

活用例:
 ・建設会社 工事状況の3Dデータ化による、進捗確認の効率化
 ・測量会社 測量対象物の3Dデータを使った、簡単かつ高精度な計測・測量
 ・点検・検査会社 点検対象物の3Dデータを使った、検査結果の維持管理
 ・製造業の工場 工場の3D化による、デジタルツイン環境の作成
 ・設計事務所 施工状況の3Dデータ化による、設計変更時の現場との差分確認

エム・ソフトは建設系の企業様とのアプリ開発実績が豊富にある為、AR、XRを使った業務効率化のご相談など、お問合せいただければ喜んで対応いたします。

②自社の商品を3D化!プロモーション効果向上

例えば商品の3DCGモデルデータを作成し、それをECサイトなどにアップ。ARを使って商品イメージを購入前に確認、といったことができるようになります。

商品イメージをよりリアルに確認できるため、プロモーションの効果が期待できます。また、「デザインがイメージしていたものと違った」「思ったより大きくて部屋に入らなかった」などのトラブルを未然に防ぐこともできると思います。

活用例:
ECサイトで新しいコンテンツ体験
ARで商品の設置シミュレーション
実店舗に来たかのようなバーチャル買い物体験
 ・家具・インテリアメーカー
 ・自動車メーカー
 ・家電メーカー
 ・雑貨
 ・食品販売会社など

      

③美術品・展示品を3D化!バーチャル博物館でコロナ対策

美術館や博物館などの展示品の3DCGモデルデータを作成して、バーチャルの展示を行うこともできると思います。

コロナ禍によって外出の機会が減っている為、会場に足を運ぶ来場者が少なくなっているところが多いと思いますが、
バーチャル博物館(美術館)のサービスをオンラインで行うことにより、新たなビジネスチャンスが生まれるかもしれません。

活用例:
展示物やマスコットキャラクターなどの3DCGモデルデータ化、AR体験
現地に行かずに鑑賞できるバーチャル展示、コロナ対策・来場意欲向上
 ・博物館
 ・美術館
 ・観光スポットなど

④人物を3D化!アバターやフィギュアを簡単に作成

人物を3DCGモデルデータ化することもできるようになります。

例えば、実際の人物をアバターにしたゲームを作ったり、実在の人物のフィギュアを制作したり、といった活用例が考えられます。
また、モーションキャプチャーと組み合わせてテレイグジスタンスを実したり、といった使い方も面白いと思います。

※テレイグジスタンス 遠く離れた場所にいるロボットやアバター(分身)を操作し、あたかも近くにいるかのように感じさせる体験のこと

少々ニッチな例かもしれませんが、アイディア次第で色々面白い商品・サービスが生まれるかもしれません。

活用例:
実在の人物をゲームキャラクターにした特別な体験価値を創出
人物のフィギュアを簡単制作
テレイグジスタンスによる遠隔地でのコミュニケーション、教育など
 ・ゲーム制作会社
 ・フィギュアメーカー
 ・ロボットやVRを活用したビジネスを検討中の会社

まとめ

以上、新機能のObject Captureについてご紹介しました。

手軽に3DCGモデルデータを作成できると、色々な活用方法が考えられるため、今後は3Dを活用した企業やビジネスがたくさん生まれると思います。
それに伴い、ARやXRを使ったアプリやサービスもどんどん生まれてくるのではないでしょうか。

今後も3DCGモデルデータやAR、XRの活用方法についてのより詳しい解説やその他の活用事例など、随時発信してきますので、楽しみにしていただけると嬉しいです。

エム・ソフトでは、iOSのVR、ARアプリ製品の開発、また点群を使ったアプリ等の開発を行っています。
これらの技術を活用したアプリケーション開発のご相談や、各種デモ・事例紹介のご依頼など、お気軽にご相談下さい。