【実機レビュー】ビジネスARグラスの決定版となるか?「RayNeo X3 Pro」を体験!

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2025.11.10

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こんにちは、エム・ソフトXRソリューションチームのカシワギです。

先日、当社のオフィスに株式会社シルバーアイの担当者様にご来社いただき、世界最軽量クラスのARグラスとして注目を集める RayNeo X3 Pro のデモ機を体験させていただきました。

「RayNeo X3 Pro」は、TCLエレクトロニクスの子会社であるRayNeoが開発した、非常に軽量でスタイリッシュなデザインが特徴のスマートグラスです。

当社エム・ソフトでは、これまでMicrosoft HoloLensやMagic Leap 1のようなグラス型デバイスを用いて、建設現場の作業支援アプリから「ゴジラ・ナイト」のような体験型アプリまで、デバイスやプラットフォームを問わず数多くのAR/MRソリューションを開発・提供してきました。

今回はこれらを手掛けた開発者の目線で、次世代のビジネスARグラス、RayNeo X3 Proの実力を徹底レビューしたいと思います。

 

主な仕様

基本仕様

重量

76g

ハードウェア

プロセッサ

Qualcomm Snapdragon AR1(第1世代)

充電方式

USB Type-C(フル充電まで約38分)

光学ディスプレイ

輝度

平均3,500 nits|最大6,000 nits

解像度

640 × 480

視野角(FOV)

30°

音声・映像

RGBカメラ

Sony IMX681、1,200万画素、F2.2、16mm超広角レンズ

空間認識カメラ

F2.0、低消費電力、6DoF距離測定対応

スピーカー

背面配置の4スピーカーシステム

マイク

3基搭載|指向性集音対応|通話ノイズリダクション対応

 

RayNeo X3 Proの魅力

1. メガネのような自然な装着感

まず驚いたのは、その圧倒的な軽さと装着感です。

RayNeo X3 Proの本体重量はわずか 約76g。これは一般的なサングラスやメガネと比べても遜色ない軽さです。

デモ機を装着した瞬間、「これなら長時間でもまったく苦にならない」と感じました。従来のARグラスやヘッドマウントディスプレイは、高性能である反面、その重量がネックとなり疲労や圧迫感が課題でしたが、本製品は、日常使いのメガネに近いストレスのない軽さを実現しています。普段かけていても違和感のない自然なデザインというのもポイントです。

重くて使いにくいデバイスは現場で敬遠されがちですが、本機の装着感であればオフィスや工場、移動中などのあらゆるビジネスシーンでストレスなく利用できるため、現場作業の支援や遠隔からの指示出しなどの用途においても受け入れてもらえそうです。


2. ディスプレイの見やすさ

次に特筆すべきは高いディスプレイ輝度です。今回は室内での体験でしたが、UnityによるデモアプリでCGオブジェクトをAR表示させたところ、その明るさは圧倒的で、公称スペック通り、日中の屋外でも十分に高い視認性が期待できます。

一方で、他社製品と比較して視野角(FOV)が30度、解像度も640 × 480と控えめなところが気になったのですが、実際に体験してみると、むしろこれがRayNeo X3 Proの利点なのではないかと思うようになりました。

一般的に視野角が広いと没入感は高まるものの、視界全体がコンテンツで覆われてしまい、現実世界での作業や歩行に集中しにくくなるという課題があります。本機では、視野角を抑えることによって、視界の大部分で現実世界がクリアに保たれるため、歩行時も不安感がなく安全に使用できそうです。

また、情報を狭い範囲に限定して表示することで、ナビゲーションの矢印や通知、業務に必要な数値データなどを、ユーザーの視界に自然に付加することができます。

これらの点で、RayNeo X3 ProはビジネスARグラスに求められる「作業時の安全性と適切な情報表示」を最適なバランスで両立しており、建設業や製造業の現場におけるDX推進に大いに役立ちそうです。


3. 高性能スピーカーとマイク

耳元のスピーカーから出力される音声は非常にクリアで臨場感があり、聞き取りやすいのが特徴です。指向性集音と通話ノイズリダクションに対応した3基のマイクを搭載しているため、騒音の多い現場での会話や音声指示にも利用できそうです。

実際にAIとの会話(中国語)を体験したところ、音声認識の精度も高く、翻訳レスポンスが非常にスムーズで、まるで目の前にいる人と対話しているかのような感覚になりました。

この性能であれば、リアルタイム翻訳や音声コマンド操作など、AIアシスタントを活用した現場作業補助での利用が期待できます。


 

ユースケース

これらRayNeo X3 Proの特長を活用することで、様々なビジネスシーンでの応用が期待できます。

製造・物流現場でのハンズフリー作業支援

  • 目的地へのナビゲーションとピッキング指示。
  • 仕分け・検品時の商品や部品情報の参照


建設・インフラ点検における情報確認

  • 作業指示書や設計図を屋外現場で参照
  • 空間認識カメラにより、作業箇所をAR表示
  • 作業手順書・チェックリストの呼び出し、音声コマンドによる記録

(デジタル作業手順書「Check+」との連携)

遠隔臨場・遠隔指示

  • 遠隔地からの現場の状況をリアルタイム把握
  • 熟練技術者による遠隔地からの音声指示
  • リアルタイム翻訳機能による外国人作業員とのコミュニケーション

 

導入・運用におけるポイント

パフォーマンスとSDK

RayNeo X3 ProはQualcomm Snapdragon AR1(第1世代)プロセッサを搭載しています。これは、複雑な3Dレンダリング能力よりも、日常使いのARグラスとしての軽量化と省電力、AR体験に必要な6DoF空間認識処理に特化したチップです。この特性を考慮すると、高負荷な処理を必要とするアプリケーションではなく、シンプルなナビゲーション、文字情報や画像によるマニュアル表示など、デバイスの性能に合わせて最適化されたアプリケーションを開発することが重要になります。

なお、現時点ではSDK(ソフトウェア開発キット)は未公開ですが、販売元の株式会社シルバーアイの担当者様によると、日本での発売後には公開される予定とのこと。SDKが公開されれば、UnityなどでRayNeo X3 Proに最適な独自アプリを開発することが可能になります。当社としても今後の公開動向に注目していきたいと思います。

追記:2026年11月20日時点でSDKは公開されています。

 

操作性とバッテリー

グラス単体で動作するスタンドアロン設計で、操作は主にテンプル(つる)のタッチやスワイプで行いますが、センサー感度が高いため多少の慣れが必要と感じました。この点については、スマートフォンとの連携による操作も可能なため、使用目的や環境にあわせて使い分けるのがよさそうです。

また、連続使用時間は1〜2時間程度と短時間ですが、約38分でフル充電できる高速充電に対応しているため、短時間の作業ごとにこまめに充電したり、モバイルバッテリーを併用するなど、現場と業務にあわせて運用すれば問題ないかと思います。


まとめ

このように、RayNeo X3 Proは、従来のAR/MRデバイスが抱えていた「重さ」「圧迫感」という最大の課題を解決し、必要な情報をストレスなく、安全に表示するというARグラスの本来の役割に特化することで、ビジネスARグラスの決定版となり得るポテンシャルを秘めています。

価格は20万円~30万円程度で発売される見込みとのことで、高性能なMRデバイスよりも導入しやすい価格帯も魅力です。

追記:2026年11月20日にグローバル市場で販売開始されました。
   日本国内での標準販売価格は税別199,800円です。

一方で、そのポテンシャルを最大限に引き出すには、デバイスの性能に合わせたアプリケーションの開発が重要です。エム・ソフトは、長年にわたりAR/MRデバイス向けのソリューションを手掛けてきました。その経験をもとに、RayNeo X3 Proのような軽量ARグラスに最適な業務支援アプリの開発が可能です。

現場におけるDXの推進、RayNeo X3 Proを活用した新しいアプリケーション開発にご興味がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください!

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